マシーネンクリーガーを作るときの2つの心得
SNSや模型雑誌などでチラっと目に通るめちゃかっちょいいマシーネンクリーガーだけど、
他の模型とくらべて作り方や塗装のアプローチが全然違うので、
「どうやって作れば良いかわからない」
「筆での塗装は敷居が高そう。」
というモデラーのために、
実はマシーネンクリーガーはカンタンに組み立てれて、筆での塗装は信じられないくらい上手くできる。
なにより模型ってこんな楽しかったんだということを体系立てて図解と写真いっぱいで紹介してきます。
このページでは
関節を固定しながら組み立てていき、筆での塗装は何度も厚塗りをすると色の深みが出てかっちょよくなります。
それを体験すると模型ってこんなに楽しかったんだと感じることができます。
「関節を固定する」工作と「筆でムラを重ねる」塗装ほんとこの2つだけでかっちょよく完成します。
写真のケーニヒスクレーテは一員がガンプラ素組モデラーからマシーネンにハマって1年後に作ったものです。
レジンキットでパーツ点数が156の大型キットですが、この2つのルールを守るだけでなぜ作れるのかを紹介していきます。
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リカバリーと筆ムラを重ねたら、かっちょよく完成した
工作の失敗とリカバリー
このケーニヒスクローテは人生2つ目のレジンキットです。
大型キット、真鍮線やプラパイプ、ワイヤーなんかの異なるマテリアルも入っていて初めてのチャレンジばかりの工作でした。
このキットは一員にとって大きなチャレンジでした、もちろんカンタンに作れるわけもなく。
この写真のようにいっぱい失敗して、いっぱいリカバリーしました。
- 合わせ目消しがキレイにできなかったり
- ワイヤーアンテナつけたけど、パテ盛るためにとっちゃったり
- サーフェイサー吹いた後に他のパーツの接着やら、真鍮線の工作をしたり
- プラパイプの奥が塗装できないから、先にパープルで下地塗装して取り付けたり
塗面が複雑になり重厚感のある仕上がりに
この写真は塗装が完了したときのものです。
筆ムラを重ねることでリカバリー跡が目立たなくなるだけではなく、重量感のある仕上がりになりました。
しかもこれは、ディテールアップの追加工作、デカール、スジボリなんかも一切しておらず、キットをストレートに組んでるだけです。
もちろんディーラーのレインボウエッグ様の美麗なキットということもありますが、
塗膜を厚く複雑に塗ることで見飽きない仕上がりとなりました。
塗れば塗るほどということは、いくらでも塗装の失敗ができるということです。
まとめ
失敗してリカバリーすればするほど、筆ムラを塗り重ねれば重ねるほど、
なぜか、めちゃくちゃカッチョよく仕上がる。
ということで 大学を留年しまくって6年も通った工学部機械工学科、
研究室では薄膜が専門だった一員がなぜかを図解して解説していきます。
光とプラスチックと金属と塗装のおはなし
光の性質
光が物質に当たったときに3つの現象が発生します。
光を跳ね返す反射、光を消してしまう吸収、光を突き抜ける透過の3つです。
それぞれ物質の種類によって異なった反射率、吸収率、透過率があり、3つを合計すると100%になります。
プラスチックと金属の違い
戦車や飛行機、兵器の素材である金属は光をほとんどを反射します。
そして、光が金属を通り抜けることは無く0%です。
模型の素材であるプラスチックやレジンである樹脂は、
光のほとんどを透過してしまいます。
光とは粒子の波動であり、それが物質内部のぶつかったときにさまざまな振る舞いをします。
物質に電気が流れやすいかどうかが、ポイントです。
すごく難しいので、深く知りたい方は下記のURLを参考にしてください。
この金属と樹脂の素材による光の反射と透過の違いこそが、
素組みで完成した模型を見て「なんかオモチャっぽいなー」と感じてしまう正体です。
逆に、フィギュアや生き物の模型などは、プラスチックやレジンの光を通す樹脂の特製を生かせるので、
リアリティが上がるのはこういう透過率が関係しているためです。
プラスチックを金属のように表現
成型色や塗装によって、
透過率を下げて、反射率と吸収率を上げることでリアリティのある金属の表現ができます。
成型色が暗い色のキットだと吸収率が高く、なにもせずに重量感のある仕上がりにすることができます。
もし、成型色が気に入らなくて、その色を変えようとすると複製して黒いレジンで作るしかありません。
現実的ではないです。
なので、塗装の面である塗面で光をコントロールします。
ブラックのサーフェイサーを吹いた上に、シルバーで下地塗装することで吸収率と反射率を上げることができます。
よく模型誌で紹介されているこのテクニックは、この原理を使っています。
まとめ
機械の素材である金属と模型の素材である樹脂は、光の透け方と反射に大きな違いがある。
プラスチックは光を通しやすけど、金属は光を通さない。
いかに、プラスチックを金属のように表現するか。そのために塗装で光の反射をコントロールします。
筆塗りのアドバンテージ
筆塗りは塗面が厚く複雑になる
模型に塗装するとなると、エアブラシか筆での塗装になります。
ここでポイントとなるのは、塗膜の厚みと複雑さです。
エアブラシはその特性上、塗膜が薄く均一に塗ることができます。
筆での塗装は、塗膜が厚く複雑になります。
塗膜は厚ければ厚いほど、光の吸収率が高くなり、透過率が低くなります。そのため、金属のような表現をすることができます。
また、筆でのタッチによって塗膜が複雑に積み重なっていくため、
光の反射もエアブラシのように一様ではなくなり表面の情報量が大幅にアップします。
エアブラシのみの塗装では、塗膜が均一なためどうしても面の情報量が上がりません。
光への影響が少ないため、材質がプラスチックぽいままとなりオモチャ感が残ります。
その面の単調さに我慢できなくなりスジボリ、デカール、ディティールパーツなどを過剰に盛ってしまいます。
ディティールアップの工程なしで情報量アップ
筆での塗装は、タッチとその塗膜の厚さがダイレクトに表面のディティールアップに繋がるため
ただただ、ストレートに組み立て、
自由に失敗を恐れずに筆塗りしてタッチを重ねていくだけで、オリジナリティある作品に仕上がります。
エアブラシでの塗装を前提として工作では、逆に面が単調になるのが怖くなって、一員もいろんな失敗をしました。
- いまいちキマらないディティールアップパーツドの追加
- プラバンやパテでシルエット変更してみるも、全然左右対称にならない
- 過剰なデカールによって注意書きだらけの兵器に
- 1mm以下のミスが気になるスジ彫り
- いつまでも終わらない無限の面だし
エアブラシだと左右対称じゃないことやはみ出たところ、色味の違いが異様に気になります。
その修正にはすごく時間がかかりいつまでたっても模型が完成しません。
エアブラシのみの塗装から筆塗りメインの塗装に変えるだけで、こういった悪夢から抜け出すことができます。
不思議なことに、筆塗りではタッチに目が行き工作や塗装のミスは気にならなくなります。
接着剤がはみ出した、パテをキレイにヤスリがけできなかったなどは微塵も気にならなくなり、
むしろ、その失敗した凹凸がより光の反射を複雑にすることでカッコいい塗装となります。
そのため驚くほどストレスなく組み立てることができます。
人間の目というのは「差」を探して動きます。
コントラストや明暗など、さまざまな色の差を追いかけるようになっています。
人間の瞳の黒目と白目の強いコントラストもそのために進化しています。
瞳の僅かな動き方を逃さずコミュニケーションするためです。
逆に動物は獲物や天敵に行動を悟られないため、瞳のコントラストは低く進化しています。
そのため、均一なエアブラシでの塗面では、
塗装に目が向かず工作の失敗に目がいってしまいます。
筆での塗装の場合は、 タッチに差があるため塗装に目が向き、
工作の失敗はタッチの情報量に埋もれて隠すことができます。
筆ムラに目が行くのもこれが原因です。
ですが、その筆ムラを何層にも重ねていくことで、逆に目が離れない塗装となります。
これが、筆塗りで仕上げた作品(模型に限らず絵画も)が見飽きないのかの原因です。
まとめ
筆塗りのアドバンテージ
- 塗膜が厚くなることで、光が透けなくなり金属のような仕上がりになる。
- 塗膜が複雑になることで、情報量が上がり無駄なディティールアップ工作が不要となる。
- 工作過程のミスはミスではなくなり、その凹凸が塗面の味わいとなる。
- 筆のタッチを繰り返し重ねることで、色に深みが出て目が離せない作品となる。
関節を固定するとめちゃスピーディーに組み上がる
関節を固定すると得れる塗装の3つのメリット
エアブラシ塗装のときは、パーツをひとつひとつ塗装する必要がありますが、
筆塗りのときは、すべて組み上げた状態で塗装すると上手に描けます。
なので一員は、すべての関節を接着した状態で塗装します。
意外と筆って届くんですよね。不思議です。
奥まっているところなんかは、 そもそも目が届かないし動かして遊ぶわけじゃないのでキレイに塗る必要がないです。
雑に暗色を重ねていますが、誰も気づきません。
ただ、もろちん難しい箇所はあるし塗り忘れるところもあるので、
込み入った模型の場合はブラックやマホガニーなどの暗色のサーフェイサーを吹いてから塗装します。
ここからは、関節を固定することで得られる塗装のメリットを紹介します。
どこが影になっているか、どこがハイライトなのかが直感的にわかる。
その暗部に暗い色を、明部に明るい色を塗ることができるためます。
そうすることで、もともと立体物である模型のコントラストがより強調され、
スケールダウンしている模型がオリジナルの大きさを感じさせることができます。
もう一つは、塗装が剥げないことです。
ガンプラなどの稼働プラモは塗装したあと、
動かして遊ぶと塗膜が擦れて剥げてしまいます。
3つめは、組み上がった状態で筆で塗るため、マスキングする必要がなくなります。
マスキングが上手く貼れてないが故のミスとそのリカバリー作業とは無縁になります。
関節を固定すると得れる工作の6つのメリット
後ハメ工作をスキップ
後ハメ工作って難しいですよね。
模型雑誌や書籍でも詳しくステップバイステップで書いてますが、 それでもなおイマイチよくわからないんですよね。
この後ハメはバラバラに分解して塗装するための工作なので、関節を固定しながら塗装するので一切不要になります。
つまり後ハメじゃなく先ハメで作ることができます。
見えるところだけ作ればいい
稼働するところがあると、この角度だと見えないけど、動かすとチラッと見えるっていうパーツが出てきます。
稼働することで、そのパーツの360度を仕上げたくなる気持ちになります。
そういったとき、裏面のディテールアップなんかが必要なんですが、
関節を固定するということでこの工作もスキップすることができます。
つまり、見えるところだけ作り込むだけなので工作難易度がめちゃ低いです
接着していくだけで完成する
ただただ、順番通りに接着して乾燥させて、接着して。。。と何も考えずに組み立てるだけで完成します。
当たり前のことなんですが、工作の順番なんて考える必要がなくなります。
手だけ動かすだけで組み上がっていく。
それにマシーネンクリーガーは1/20というスケールなんですが、
実物をスケールダウンして模型にしたわけじゃなく、
オリジナルモデルが他のキットの流用パーツで組み上がっていくため、無理な工作が少ないキットばかりです。
また近代のマシーネンクリーガーについては、
さらに組み立て工程が仕上がっており、 アンモナイツなんかは究極なんじゃないかってくらい組んでて楽しいのです。
すごくおすすめです。
めちゃめちゃ頑丈に完成する
ポリキャップによる挟み込みじゃなく、面と面がガッチリ溶着しているためです。
軽く落としてしまっても破損しないです。
カリカバリーの回数が減るので完成がぐっと近くなります。
最近はこのガッチリ感に魅了されすぎて、ポリキャップですらABS接着剤でバッキバッキに固定してやってます。
エナメルでも割れない
普通の組み立てだとエナメルでのウォッシングでパーツを割ってしまったりします。
それはエナメル溶剤がプラスチックを固く(つまり脆く)してしまい、
テンションがかかっている箇所を割ってしまうためです。
関節を固定していると、 面と面が溶け合って接着されており、
はめあいによる負荷がかかっていないため、割れることはなくなります。
なにも考えずにジャブジャブにエナメルを使うことができます
武器が落ちない、取れない
飾ってても武器がボロっと落ちること何度もあったと思います。
しかも全然ホールドしてくれないんですよね。
この武器をうまくホールドしてくれるポーズでしか飾っておけないことに気づき悲しい気持ちになります。
この武器すらもガッチガッチに接着してあげれば、一番かっこいいと思えるポーズで飾ることができます。
冷静に考えてみれば、99.99%の時間は飾ってる時間で、ブンドドで遊ぶ時間はほんの僅かなんですよね。
完成後の満足度がぐっと上がります。
もし色んな武器を載せ変えたいと思ったら、もう一つ同じキットを買ってきて作っちゃえばOKです。
関節の固定と筆の塗装で誰でもカッチョいいマシーネンクリーガー
体系的に真面目に記事を書いていくとななかなのボリュームになりました。
最後に「塗装」、「工作」、「エアブラシと筆」と書いてきたことをまとめます。
塗装について
- エアブラシではなく、筆を使って塗装します。光と素材の性質を利用します。
- 塗膜が厚く複雑になることで、よりリアルな金属感や重量感を表現できるようになります。
- 筆のタッチ1つ1つが情報量となるため、過度なディテールアップが不要となります。
工作について
- 可動する関節をカッコいいポーズで接着して組み上げます。
- 動かさないのであらゆる工程の要求レベルをぐっと下げることができます。
- 初心者でもどんな難関キットでも完成までたどり着けます。
エアブラシと筆の違い
- エアブラシ塗装を前提とした工作は減点方式ミスが目立ってしまうため、
すべての工作のステップを100点満点を出し続けないいけないと感じてしまいます。 - 筆塗装を前提とした工作は加点方式ミスが目立ちにくいだけではなく、
そのリカバリーした下地すらも筆でのタッチとしてしまえるためです。
もっと深くこのマシーネンクリーガーの作り方を知りたいという方には、
横山先生著の「モデリングブック」「モデリングブック2」がオススメです。
先生の独特な言い回しも面白いし、読むたびに次に試したくなる発見があります。
一員も模型本はいっぱい持ってますが、1番ボロボロになるまで読んでるのがこの2冊です。